しかし、来春、卒業お祝いに両親が買ってくれることになった。

小学校を卒業、いよいよその日が来た。日管フルート。縦に持つケースに入っている。開けてみた。３つに分かれている。
いろいろ試したが、まったく音が出ない。ヤマハ音楽教室に通うことにした。先生は菊池洋子先生。グループレッスン。
大人の人ばかり。
“バラが咲いた”を習った。ドードド、ドーレー、ミーミミ、ミーファー、そして、意識不明。床に倒れる。
５分経過、意識が戻る。
そして、また、ドードド、ドーレー、又、倒れる。繰りかえし。次の曲はちょうちょ。ソミミー、ファレレ〜〜バッタン！

意識不明。

苦し〜い。フルートは苦しかった。

中学に入学した。広島市翠町中学校。ブラスバンド部に入った。
念願のフルートパート。
しかし、全く演奏する機会もなく、山口県に転校。父のポンコツ軽自動車で向かう。
防府の手前で車が止まった。煙をはいている。車を乗り捨て電車にてどうにか着いた。
湯田中学校にはブラスバンド部がない。私の夢はこれで終わり？

しかし、何か知らないが、フルートは吹いていた。

梶田先生のお宅で初めて、フルートのレコードを聞かされた。モイーズという人の演奏だった。
その音は、まるでヴァイオリンだった。私の音と、えらく違う。強くて芯がある。フルートはフワフワした音だと思っていた。

何せ、それまで自分の音しか聞いたことがなかった。

しかし、このレコードを聞いたおかげで、私は上達した。高校１年生の時、学生コンクールで優勝した。
そのお陰で、テレビ出演もした。
自分はフルーティストになるんだと、勘違いすることになった。

間違いの元、１。

初めて、プロのフルートの人の演奏会に行った。ランパルというフランスから来た有名な人だった。
母親が防府まで連れて行ってくれた。生まれて始めて聞いた生のフルートの音。
ジャリジャリ、シャーシャーしてて、私の音の方が綺麗だと思った。

間違いの元、２。

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音大を受験することにした。広島の菊池洋子先生のもとに再度、通い始めた。山口から、先生宅へ。
先生は厳しかった。
車酔い、いや電車酔いをする私は、レッスンの前、いつも駅の医務室へ駆け込んだ。１時間、そこで横になってから行く。
先生から、汽車の臭いがすると、怒られた。
何のことかよくわからなかったが、結局、広島に転校した。、
林りり子先生のレッスンを受けた。しかし、翌年林先生は亡くなった。

高校３年生。東京に行くことに決めた。
武蔵野音楽大学教育学科フルート専攻に受かった。器楽学科ではなかった。
しかし、違いは、ただ、教育課程を必須することが条件。あとは、フルートレッスン他、すべて同じ。

ここに決めた。

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親元を離れて東京へ出た。１８歳。嬉しい。
佐伯隆夫先生という方が私の師となった。温和な方、レッスンがはじまった。
しかし、初めて私はフルートが下手だということを知った。これまですべて、勘違いだったということを知った。

学年で一番へただった。

まず、曲の途中で音が出なくなる。息絶え絶えになって、死にそうになる。
いや、、自分のしたくない冷静な音楽をすると、音が出るのに、自分のしたい音楽
をしようとすると、突然、フルートの音が出なくなる！
実は私は暴れ馬だった。この時はまだ、本当の暴れ馬の意味を知らなかった。

２５年後、それを知った。

フルート仲間がたくさんできた。好きな人もできた。
そして卒業。フルートがちっとも上手くならなかった。在学中、自分の奏法に欠点があるのを知った。
一からやり直した。

仲間たちが、フルートソナタ、コンチェルットを練習している中、私は、メリーさんの羊を吹いていた。
このままの奏法では、将来よい演奏はできないことが目に見えた。
一からやり直すことに決めた。

音大生がメリーさんの羊、、、。

結局、卒業までには間に合わなかった。奏法が決まらない。これでは、フルーティストにはなれない。

音大で一つだけ、教わった。プロになる条件を。
自分のことを下手だと言ってはいけない。どんなに演奏がひどい状態になって、自殺したいほどでも、
終わった後、ダメだったなど、口が裂けても言ってはいけない。
プロとは、自分が商品。売る商品をひどい、腐っている、など言って売る人はいないと、、。
アマチュアとの違いは、唯一、自分のことをダメだ、下手だと言わないこと、、。

この教えは、大変つらい。演奏後、大きな声で泣きたいばかり。しかし、ぐっとこらえて、笑顔のみ。

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ジェームズ・ゴールウエイに出会った。
凄い。
これまでに聞いたことのないフルートの音だった。
フルートの虜になった。
この音が出したい。この音以外のフルートだったら、吹いてもしかたないと思った。
フルーティストになれなくてもいい。この音が出したい。

一生かかっても。

しかし、その努力は、、、、、。できなかった。
生活していくための毎日には、この音を出すための練習時間はなかった。
家賃、電話代、食べ物、、、。卒業直後、親からの仕送りは、止まった。　
週２回、フルート協会でアルバイトをした。
吉田雅夫会長のもと、青木明先生、峰岸壮一先生方々の腕となり足となった。
会議が終わるのが午前３時。江古田のアパートに午前４時。
しかし、フルートを通して皆が一つになっていた。楽しかった。

どうにか、音楽教室での指導の仕事が入った。
しかし、フルートは相変わらず上達しない。イライラした。
ヤマハからリコーダーを教える話が来た。定職のない私にとって、いい話だった。
教育課程必須だったお陰で、副科でリコーダーを学んでいた。

アクトリコーダーアンサンブルに入団することになった。

子供たちにいい音楽を聞かせるのが目的だった。
ヤマハから、ピアニカを使ってみては？という案がでた。嫌だった。
しかし、吹いてみたら、フルートでの悩みが一気に解決した。

音が出る。

自分の音楽表現をしても、死にそうにならない。
あばれ馬が本性を発揮できる唯一の楽器だった。フルートと違い、あばれても音が出る。
これでチャルダッシュを仲間と共に吹いた。
フルートでできなかったことができた。アクトという仲間ができた。音楽ができた。
活動が世界に広がった。

そして、、、暇がなくなった。

又もや、フルートから遠ざかった。

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２７歳、結婚した。１８歳のころから好きだった、フルートの同級生。
そして、３０歳の頃、離婚した。とても悲しかった。心が立ち直るまで、数年かかった。
仕事に没頭した。
フルートの指導、演奏、リコーダーのコンサート、講習、
アクトを通じて、台湾、シンガポール、マレーシア、全国各地、世界へと広がった。
１年間で休みが３日間しかなかった。

元気になった。

そして、お金が儲かった。
それと同時に、、、、ますます、自分のフルートを上達させる時間がなくなった。

ゴールウエイの音、ますます遠ざかる。３６歳。

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お見合いをさせられた。

顔が普通の人の３倍ある。母親に相談した。
結婚しなさい！人間は顔じゃない！
その人は、結婚して一緒にアメリカへ行ってほしいと。これまでの仕事はどうなる？
せっかく広がった仕事、生徒たちは？３６５日のうち３６２日埋まっていた仕事の毎日はどうなる？
アクトという音楽の仲間は？

すべて捨てて、この人と？？？結婚する？！？？？

ことに、、、、決めた！

温かそうなこの人の横顔に、人生の変わり目を感じた。。３７歳。

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シアトルへ住んだ。
仕事をしないのに、ご飯が食べられることにびっくりした。
お金も、使っていいと言われる。これが結婚なのか、、、？
フルートが好きなだけ吹ける。こんなことが、あっていいのか？？

ずっとずっとフルートを吹いていていいのか！？！

アニーというフルーティストの友達ができた。
アメリカ人は何かにつけて、変だった。新築の家ができたというので、遊びにいった。
玄関に戸がない。窓枠には、ビニールシートがかかっている。
壁も塗られていない。誰が見ても、崩れかかった廃墟。これが新居？

食事にスープが出た。メインは何かと、待った。しかし、これで、終わりだった。
彼女は将来食べるために庭に、豚と、ヘンリーという名前の七面鳥を飼った。
とってもかわいい。これを食べるとは！？！案の定、後に殺せなかったと自分を責めた。

そんな、フルーティストに私は会ったことがなかった。

オカメインコを飼った。
１ヶ月したとき、自分で自分のことを、高い声で“こはるちゃん、、、”としゃべった。
この日から、愛しいわが娘と変身した。４年後、オスであったことがわかった。
娘が息子に変身した。１１年目、亡くなった。

一生分の涙が出た。

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音大卒業後１日目、仕送りが止まり、生きていくために精一杯だった。
留学という夢のような言葉。勉強という夢の言葉。私には、無関係だった。

その念願が、今、叶った。

シアトルシンフォニーのピッコロ、フルート奏者、ザート・イビーのもとへ、レッスンに通い始めた。
念願の、それまでできなかった、フルート上達の日々が始まった。

しかし、やはり、私は下手だった。

仕事ばかりしていて、練習できなかったのだから、あたりまえか。
口に力が入りすぎて、音がでない。
３８歳、まだまだ、これから！！そして、又、メリーさんの羊を吹いた。

４年後、やっと、力が抜け、フルートが少し吹けるようにになった。

お見合いで結婚した夫は、変な人だった。
私に全く文句を言わない。何をしても、ニコニコしている。
そして、何よりまして、変なのは、音楽が大好き。コンサート、オペラ、そして、ＣＤショップに入り浸るのが大好き。
理解不能。これまで知り合った音楽仲間にこんなに音楽の好きな人はいない。

小春と夫、初めて味わったこの感じ。４０歳。

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日本へ帰国。力が抜けすぎていた。
自分が日本ではどれだけのものか？？？有田正広さんのところへ、伺いに行ってみた。
あなたは、トランペット奏者ですか！？！と言われた。

中野真理さんのところへ行った。音がふわふわ。もっと、びしっと！！力、抜けすぎ！！と！！
（鍛えられたお陰で、随分上達したが）
力が入ったり、抜けたり、入ったり、抜けたり、、、、どうすればいいのか？？
フルート、どうやって吹けばいいの？！？わからない。
ゴールウエイには程遠い。世界一のフルーティストになりたい、のだが、。

夢は捨てない！頑張るぞ！４３歳。

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突然、夫が会社を辞めると、いい始めた。
アメリカで４年ビジネスマンをした彼は、もう、保守的なやり方の、日本ではやってられない！と。

もちろん、Ｏ．Ｋ．！！

辞めた後はどうしよう？？地図と広げた。
ハンガリーへ行って何かしようか！
物価が安い、何より、素晴らしい音楽がある！よし！決めた。二人でハンガリーへ行こう。

ブダペストにアパートを借りた。
しかし、弁護士に騙された。借りたアパートに泥棒が入った。
（そのハンガリーの泥棒が盗んだものは、ＣＤベートーベン交響曲全集だった！さすが音楽の国。）

その、後始末に行く途中タイに寄った、タイでは、強盗に、ハンドバックをひったくられた。
それを追いかけた夫は自分で転んで血まみれになった！
二人で警察へ行った。
苦難を乗り越え、ブダペストの部屋にたどり着いた。
TVをつけた。その瞬間ニューヨークマンハッタン、飛行機がビルに突入した。
会うことになっていた、ハンガリーのフルート奏者、１時間たっても、こない。
自動車事故だと。

天中殺か！！

ハンガリーが来るな！来るな！と言っている。
しかたない、諦めようか、、。

諦めた。

日本で、まっとうに生きることに決めた。

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夫、日本の会社に再就職。私、生徒教えることに、そして、アクトに戻った。
日本人らしい、忙しい、忙しい、世界に引き戻された。３年経った。
生徒５０人！

私はとっても、いい先生だった。下は５歳。上は８０歳。
子供たちは、生き生きと笛を吹き、大人たちとは、フルートを通して、人間の語らいができた。
みんな、みんな、とても、上達する。感激！
しかし、、、よき先生である私は、どんどん、、、エネルギーを消耗していった。
生徒はうまくなるのに、私はうまくならない。フルート、まだまだ、自分の目指す音がでない。

７年経過した。私５０歳。夫５７歳。二人揃って、つぶやいた。そろそろ、日本脱出する、、？？

よし！

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今度こそ、新たな出発だ！！私はどこにいても、フルートは吹ける！もっと、もっと、上達するぞ！
夢は捨てない。
貯金も少しはできた。引越しの準備にかかった。
今度は、どこに行く？？クロアチアにしようか。リエカという、町に行こう！
そこで、何かしよう！
日本からの観光客のために、あちらのレストランのメニューを日本語に直す仕事はどうか！！
決めた。
そして、夫は会社を辞めることにした。
成田空港のそばに、ただに限りなく近い、中古家を発見。そこに、荷物を入れることに決定。
その成田の家の掃除にでかける朝。夫、メルマガで、何やら見つけたらしい。

それは、かつてハンガリーへ行きそびれて以来、送ってくる、ハンガリーメルマガ、“うじぇ〜”

そこに、求む！日本人営業マン。ハンガリーで働ける人。

条件１、ハンガリーが好きな人。
そしてその他の条件、夫の経歴と全く一致。クロアチアとハンガリー、、、お隣国。
給料は安いが、、。しかしメニュー書きより、ましか！！決めた。

ハンガリー！

私たちが一度断念した国。今頃、になってお呼びがかかった？！？

とんとん拍子話が決まり、その、2ヵ月後は、ブダペスト。

忘れた頃に、夢叶う。

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